風のない
穏やかな月夜の海には
ちらちらと
小さな銀の波たちが
次から次へと
生まれては
声もたてず
水面にとけて行く
まるで
限りなく敷き詰められた
光る欠片のよう
叶わぬ恋の欠片だったり
ぽろりと涙の欠片だったり
遠すぎる想い出の欠片だったり
忘れ去られようとしている欠片たちは
消え行く前の一瞬
あえかな光に身を変えて
そっと夜に還って行く
もうこれで
誰も哀しませなくてすむかしら
小さな銀波たちの
やさしいつぶやきを
聞いているのは
蒼い月だけ
(写真素材)
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